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資産の把握

(1)本人から任意の開示を受ける

任意に有効な開示を受けることは、債権回収上の問題を生じた段階では難しいと考えている人も少なくないと思います。

もっとも、支払に窮している債務者が、経済的窮状に関する情報を開示して債権者から理解を得たいと思うことも少なくありません。債務者の窮状を理解するために開示を受けた客観的な資料(決算書や預金通帳など)の中から、保険や証券のような資産が見つかったり、現時点ではローンが上回っているものの将来余剰価値を生じ得る不動産のような資産を発見できたりすることもあります。
特に債権者が弁護士に正式に事件を依頼していない段階では、債務者側の警戒心が薄いこともなり、思いがけない資産開示を受けられることもあります。

一方、裁判等に至っても、裁判官から積極的に和解による解決を促す場合も多く、その過程で裁判官の指示に基づいて債務者から任意の資産開示が行われ、新たな執行対象財産が見つかる例も少なくありません。

(2)弁護士法第23条の2に基づく照会(弁護士会照会)を利用する

弁護士は、弁護士法第23条の2という根拠条文に基づき、弁護士会を通じ、公私の団体に対し、弁護士が訴訟等の受任事件を処理するのに必要な情報を照会することを許されています。
このいわゆる「弁護士会照会」は、刑事訴訟法第197条第2項の捜査機関による照会制度と同様の照会制度として弁護士法に創設され、照会先に対して公法上の回答義務を課すものと理解されています。
万が一、同照会に反して正当な根拠なく回答を拒絶した場合、当該公私の団体が損害賠償義務を負う場合もあります。

本照会制度の特筆するべき点は、一般に、照会を実施したことが債務者に知られないことにあります。したがって、照会の結果資産に関する有力な情報を得ても、そのことが債務者に知れ、秘密裏に処分される事態を避けることができます。また、他方で、照会の結果債権回収において有益な情報を得られなかったとしても、債務者がそのことを知ることもありませんから、そのことによって債権回収交渉において不利な立場を強いられることも避けられます。

照会先や照会内容は無限に考えられますが、債権回収において実施することが多い例として次の照会先及び情報が挙げられます。

(代表例)

照会先 照会内容の例
金融機関 債務者名義の預金の有無・口座のある支店名・口座科目・残高
保険会社 債務者名義の保険契約の有無・内容・解約返戻金額
ビル管理会社 債務者の賃借契約の内容・敷金額・賃料等の引落口座
日本放送協会 債務者のNHK受信料の引落口座
携帯会社 債務者の携帯料金の引落口座

※ 必ずすべての照会先がこれらに遺漏なく答えてくれることを保証するものではありません。
※ 照会の前提として判決等の債務名義を必要とする場合があります。

(3)執行法上の手続を利用する

民事執行法は、基本的には、抵当権等の担保権、判決・和解調書などの債務名義に基づき、債務者らの財産から強制的に回収を行うための手続などを定めた法律です。
民事執行法は、その一環として、従来から、債務者に対して財産状態を陳述させて開示させる財産開示手続(196条以下)を定めていましたが、これに従わない債務者に対して過料の制裁を課せるにとどまっていることと、裁判所が過料の制裁を積極的に課そうとしないことの両面において、従来の財産開示は実効性に乏しく、あまり活用されていませんでした。

そのような実態に対する反省もあり、民事執行法が改正され、2020(令和2)年4月1日より施行されました。
同改正によって財産開示手続が次のように拡充されており、これらを利用した資産把握の方法が債権回収において新たに追加されました。

① 第三者からの財産開示手続の新設

対象第三者 情報の内容 根拠条文
銀行などの金融機関 口座のある支店名・口座科目・残高等 207条1項1号
証券保管振替機構や証券会社など 上場株式、国債、投資信託受益権等の詳細 207条1項2号
登記所 土地又は建物その他これらに準ずるものの詳細 205条
市区町村・日本年金機構など 給与や報酬や賞与に関する詳細 206条※1

※1 この情報の取得については、申立できる者が養育費・婚姻費用等の請求権を有する者か、生命身体の侵害による損害賠償請求権を有する者に限定されています(206条1項柱書)。

② 債務者から財産開示を得る手続の拡充

債務者から財産開示を得る手続に反し、これに協力しなかった債務者に対し、従来、30万円以下の過料の制裁を課すことまでしか定められていませんでした。
改正法は、財産開示手続に対する債務者の協力義務の違反に対して罰則を強化し、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が認められるようになりました(213条1項)。
行政罰である過料とは異なり、懲役または罰金という刑罰が課されることにより、債務者が任意にその手続に協力することが強く期待されます。

(4)破産管財人を通じた資産調査を主導的に進める

資産背景があることが確実に予想されながら、資産開示を行わず、かつ、返済も行わないような債務者の場合、債権者申立の破産を視野に入れることも1つの手段です。
破産手続の申立を行った場合、破産管財人が債務者の資産を調査して現金化し、これを債権者らに配当します。

あくまで破産手続開始決定がされた場合、配当によって債権回収を行うのにとどまるので、申立てた債権者が優先的に回収することまでは期待できませんが、債務者に任せておけば流出されていたかもしれない資産を押さえることができ、かつ、配当によって最低限の回収を実施できる可能性が生じます。

また、債権者申立の破産手続においては、破産手続開始決定の要件の調査のため、申立人と債務者に対する審尋期日が設けられます。そこで債務者から資産があって破産状態にないことの具体的な主張がされることがあり、その場合には、結果として債権者の破産申立自体は取下げを余儀なくされるとしても、当該資産から優先的に回収できる機会が確保される場合があります。

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